たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「薬が効いたのだな」水銀中毒の特徴的症状がないことにエルンストは胸をなで下ろす。


「ここ....は?」虚ろな瞳でフィーアが問いかける。



「離宮の一室だ。皇妃様のご厚意でここに留まることを許された」


「そう....でした....か」声には力がなく、肩で息をする姿が痛々しい。



「......夢を.....見ておりました」



「夢?」



「はい」



「わたくしは冥界へ行くことを拒まれました」



「何を言っている。お前を冥界へなど行かせるものか」フィーアを強く抱く。



「.....どうしてカロン様はわたくしを船に乗せて下さらなかったのでしょう?」



「フィーア?」


「このまま死んでもよかったのに」


「どうした?何故そんな事を言う?」
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