たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「苦しいからです。奴隷になった我が身を恨むこともあります.....でも」


フィーアの瞳からは涙が溢れていた。


「いっそ死んでしまえばこの苦しみから解放されます。わたくしたちは結ばれてはいけなかったのです」



「フィーア?」エルンストはフィーアの瞳をのぞき込む。


「あなたはベーゼンドルフ家の当主なのです。いつまでもわたくしのような者がおそばにいては差しさわりがありましょう」



「何故突然そんなことを言う?誰かに何か言われたのかっ?!」


フィーアは力なく首を振る。

「以前から考えておりました。わたくしはあなたの輝かしい未来を奪ってしまう」



「俺の未来とはなんだ?帝国の大臣になることか?跡継ぎを作ることか?
お前のいない人生に未来などない。
お前を失うのであればベーゼンドルフの家紋など捨ててもかまわん」



「エルンスト様.....」


嬉しい、嬉しいけれど.....。私のためにベーゼンドルフ家を捨てるなどとおっしゃらないで下ださい。

私にはそんな価値はないのだから。

先祖が血のにじむ思いでここまで築いてきたものを簡単に捨てるなどと言わないで。

爵位はく奪。その辛さが私には痛いほどわかるから。

フィーアの胸は張り裂けそうだった。
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