たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「ファーレンハイト、幕僚たちを集めてくれ。俺一人では思案に暮れる」


「はっ」敬礼するとファーレンハイトはいったん執務室を退出する。


ふと窓の外を見ると、珍しく空が曇っていることにエルンストは気づいた。

「このところ晴天が続いていたからな」


遠くで雷の音もかすかに聞こえる。これはひと雨来るか?


曇天の空は気分を落ち込ませる。

重く垂れこめる雲は自分の心を映しているようだ。

不思議なもので、天気がいいと落ち込んでいてもやる気が出てくるのだが、気持ちが沈んでいる時に天気が悪いとそれを加速させる。

今日は厄日か?

フィーアを思い浮かべて、ため息を一つつくも、今日のことは夜にもう一度話し合えばいい。

さっきは起き抜けで頭も混乱していたのだろう。

冷静になれば分かり合えるはずだ。


ノックの音と共に幕僚たちがファーレンハイトと執務室に姿を現した。


会議が始まると、窓を雨粒が濡らし始めていた。
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