たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
あたりは騒然として、気がつけば二人は数人の士官たちにがっちり押さえられた上、やっとの思いで引き離さなけらばならないほど派手な喧嘩をしていた。


ゼエゼエと全身で荒い息をしたまま、それでも二人はにらみあっている。


「お二人とも何があったのです?」


エルンストより10歳は年上で中肉中背。口ひげをはやしたベーム大佐が仲裁に入る。


「お前には関係ない。これは俺とファーレンハイトの問題だっ!」
両腕を士官たちに押えられながらも、まだファーレンハイトにつかみかかろうと、エルンストはもがく。


ベームはいささか呆れた顔をした。

「ですが閣下。兵士同士の喧嘩は軍律によって厳しく禁止されております。お二人とも営倉に入っていただきますぞ。それをご存知ないお二人ではありますまい」



「くっ!」エルンストは全身の力を抜いた。とエルンストを羽交い絞めにしていた兵士たちが手をゆるめる。

それど同時にファーレンハイトも「離せっ」兵士を一喝して床に座り込んだ。


「何があったか知りませんが、ほどほどにして下さい」苦い顔のベームに対して、「世話の焼ける上官で悪かったな」エルンストが憎まれ口を言う。



それには答えずベーム以下兵士たちは敬礼すると執務室を出ていった。


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