たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「すぐにその侍女を呼べ。ブロンドの髪にグレーの瞳....」


間違いない。フィーアのことだ。

女好きのゲオルグのこと、まさか側室にすると言い出すつもりなのか?

エルンストは背筋が凍った。


「どうした?早く呼ばんか」ゲオルグの言い方は推定ではなく断定だ。


「はい」エルンストはためらっていたが、いつまでも誤魔化しているわけにもいかず、コンラートにフィーアを呼んでこさせた。


すぐにコンラートに付き添われてフィーアが姿を現わすと、うつむき目をふせてエルンストの隣に並んだ。


後ろに控えているコンラートも緊張のあまり少し震えているようだ。

ここでフィーアが奴隷とバレたら、ベーゼンドルフ家は侯爵号のはく奪、領地没収。領民は露頭に迷ってしまう。良くて隣接する領主に預ける形になるものの、いずれにしても混乱を招くこととなる。

ご主人様の伯父上ユンゲルス様も今だ幽閉中。皇妃の父上だからと爵位はく奪は免れているものの、ベーゼンドルフ家はどうなってしまうのだ。

コンラートは青くなるばかりだ。


やはりご主人様がフィーアを拾ってこなければこんなことにならなかったのではないか?


いや、フィーアがいなければご主人様は娼婦ばかり相手にされて、未来永劫お子はいなかっただろう。とすればベーゼンドルフ家は断絶。

たとえ正妻になれなくともフィーアとの間にお子がいれば断絶は免れる。

やはりフィーアが来て良かったのだ。

だが今、それが言えるだろうか?

フィーアが奴隷とバレたら全てが終わりなのだから。


コンラートの思考は堂々巡りを繰り返していた。
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