たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「ったく、手間かけさせるんじゃねえ」


奴隷商人の下品な声があたりに轟く。


「いやだねぇ、さっさと行っとくれ」


通行人の老婆が怪訝そうな顔で奴隷に向かってツバを吐く。


「悪いねぇ、ばあさん。こいつらがさっさと歩かねえんでさっ」


商人の声を聞きつけて、子供たちも集まって来た。


「「わー、奴隷の行列だぁ!!」」


目を輝かせて子供たちは道端の石ころを拾うと、奴隷たちに投げつけてくる。


「「痛いっ!やめてくれっ!」」


口々に叫ぶものの、子供たちはますます面白がる。


逃げようにも逃げられず、体を寄せ合い頭を隠し、恐怖におののき歪む顔はその場にいた人間たちを益々不快にさせる。


ぼろ布をまとっただけの奴隷服は袖もなく皮膚の露出している部分が多く、石があたった皮膚からは鮮血が流れ出す。

同情より不快と憎悪しか与えてもらえない憐れな生き物。


奴隷の悲鳴を楽しんでいた商人の男だったが、子供たちの投石が苛烈を極めさすがにマズイと思ったのか、


「おい坊主ども、大切な商品をこれ以上傷つけないでくれよ」

止めに入って、やっと石の雨がおさまった。


「おら、行くぞっ」ムチの音と共に、奴隷たちは再びゆっくりと歩を始める。
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