たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
────エルンストはバルコ二ーにいた。

夜風を体に受けながら、漆黒の闇を見つめている。


「鬼畜は俺だ」奴隷商人に吐いた言葉を思い出していた。


「どうなさいましたか?エルンスト様」


ヘレナだった。


ヘレナの表情には安堵が見受けられる。

今ここにエルンストがいると言う事は、フィーアを抱いていない。
そう思っていた。

あの娘は慰みものになることを免れた。
侍女として屋敷に置いてもらえるよう頼んでみよう。
きっとご主人様は私の願いをお聞きくださる。

ヘレナは人知れず胸に手をあて笑顔を夜空に向けていた。


「最初はあの娘に奴隷の世界とは違う世界を見せてやろうと買ったのだ。ほんの気まぐれだ。抱く気など無かった」

「存じております」

ヘレナの声はまるで母親のそれのように穏やかだ。


「しかし、フィーアの瞳を見つめた途端に.....欲しくなった。自分を制御できないなど最低だ。俺は駄目だな」

己を御せずしてどうして一個師団の指揮が取れよう。
自分を律するエルンストだった。
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