たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
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エルンストが出かけた屋敷でフィーアは同じ年の侍女、ルイーズに仕事や屋敷での暮らしを教わっていた。


「侍女は何でもしなきゃいけないのよ。あんたはご主人様付だから、まず身の回りのお世話でしょ、それから今みたいに皿洗いや掃除・洗濯。雑用も結構あるのよね」

洗い場にたまった食器をすすぎながら、ルイーズはため息をつく。

「コックは食事を作るだけ、庭師は庭の手入れだけ、馬番は馬の世話だけ。ほんといいわよねぇ。侍女の仕事は多すぎなのっ」

口をとがらせ不満気味だ。


フィーアは笑いながら黙って聞いている。


「あっ、それからね.....」

急に小声になるとフィーアに顔を寄せてくる。


「時々娼婦を呼ぶんだけどさ、その案内はあんたの役目だから」


「案内?」首をかしげる。


「そ、娼婦は下僕が屋敷まで連れてくるんだけどね。裏口から入れるからご主人様の部屋まで案内するの」


「どうして玄関を使わないの?」


「バカねっ、娼婦を堂々と玄関から招き入れるわけないじゃない」


そっか。納得する。


「でね、その後が大変なんだけど.....」

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