たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「前までは私の担当だったんだけど」そう前置きしてルイーズは言葉を続ける。


「その.....行為が終わるまで部屋の外で待ってなきゃいけないのよ」


「部屋の外で?」


「うん。これが結構辛いのよねぇ」

その時の様子を思い出すような表情だ。


「終わって出てきた娼婦をまた裏口へと連れて行かなきゃならないでしょ?
いつ出てくるか分からないから、外で待ってるの。大抵夜明け前だから体力的にきつくてさ」


フィーアは黙っている。


「前に呼んだ娼婦が、ご主人様の寝てるすきに部屋を抜け出して屋敷の高価な品々を盗んでいったらしくてさぁ。それ以来侍女が待機することになったの」


「ふーん」フィーアはエルンストの姿を想像する。

「娼婦をお呼びになるなんて意外だわ」

あの風貌からは何となく想像出来なくて少し困惑する。
だって女性には不自由しなさそうなのに。


「こらこらあなた達、手が止まっているわよ。仕事はまだまだ沢山あるんですよっ」


ヘレナが屋敷の畑から収穫した野菜をかごいっぱいに乗せて帰ってきた。


「「はーい」」


二人は肩をすくめて、慌てて食器を片付けた。
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