たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「そうそう、フィーア」

ヘレナに呼ばれて、作業の手をとめる。


「はい、何でしょうか?」


「ちょっと重労働なんだけど、水瓶の水が減ってるから井戸で汲んできてちょうだい。井戸は勝手口を出たらすぐだから」


「わかりました」頭を軽く下げる。


「ルイーズはそれが終わったら洗濯ね」


「はーい」やれやれと言った顔で返事をする。


ヘレナは忙しそうに台所を後にした。


「ヘレナさんはいい人なんだけど、人使いが荒いところがあるのよ。
あんたも息抜きの仕方を憶えたほうがいいわよ。
あーあ、誰かあたしをもらってくれる紳士が現れないかしら?」



「まあ、結婚したいの?ルイーズ?」


「当たり前でしょ?上級貴族の奥様になって優雅に暮らしたいわぁ。でも、下級貴族じゃあね...って冗談よ」

ルイーズは表情をゆるませる。


「どうして?頑張ればいいじゃない」

「あんたバカ?下級貴族が上級貴族と結婚できるわけないでしょ」

「そ、そうなの?」

「この国では身分差婚は法律で禁止されてるの。知らないの?」

「知らなかった。ごめん」

「血統を守るためらしいわよ。上級貴族様の考えそうなことよね。バッカみたい」

「う、うん」
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