たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「ねえ、あんたさぁ。本当は名家の出なんでしょ?」

ドキン。フィーアの心臓が跳ねる。

「ま、まさか。だってわたしは奴隷なのよ」震える声を抑えるのがやっとだった。


「だから、奴隷になる前の話じゃない。親か兄弟が罪を犯したんでしょ?」

フィーアのひざがガクガク揺れているのをルイーズは見逃さなかった。


「ごめん。悪かったわ。もう聞かない」

そう言うと、洗濯をするためにルイーズは台所を出て行った。


独り残されたフィーアのひざはまだ震えていた。

過去の辛い記憶が否が応にも思い出されてしまっていたから。

時々夢にまで出てくる消えない悪夢。


「お父様、お母様.....」

フィーアの瞳からは一筋の涙が流れていた。



「フィーア。水汲みは終わったの?」


背後からヘレナの声がした。


急いで涙をぬぐうと、「ただいまっ」目の前の水桶を手に逃げるように台所を後にした。
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