たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
一通りの報告を聞き終えたゲオルグは、

「人払いを」

軽く手を挙げると、二人の側近は一礼して謁見の間から姿を消した。



「楽にしろエルンスト」


「はい」ひざまずいていたエルンストは立ち上がると、足を開き両手を後ろに回した。


この立ち姿でさえ、女を魅了するのであろうな。ゲオルグはそう思いながらエルンストを見つめた。


「最近はどうだ?」


「はっ、最近と申されますと.....?」


「今だ娼婦しか相手にしておらんのか?」


そんなことまで陛下のお耳に入っているのか。困惑する。


「宮廷には美しい蝶がドレスをひるがえしてあちこち飛んでいると言うのに」

足を組み替えながらゲオルグはにこやかに話しを進める。

「結婚はいいぞ。
毎朝目を覚ますと、隣に美しい妻の寝顔があるのだ。
世は愛おしい妻の顔を見るだけで、天にも昇る気分だ」


「それはようございました」


エルンストより二歳年上の皇帝が結婚したのは半年前。

国中の嫉妬や羨望を一心に受けてその皇妃となったのは宰相の娘ゾフィーだった。


ゾフィーは21歳。華奢な体と言うより出るところが出ている、むしろふくよかな印象の美しい女性だ。
エルンストとゾフィーの父親は兄弟で二人はいとこ同士だった。


「ゾフィー様は大変美しくていらっしゃいますから、陛下もお幸せですね」


ゲオルグは満足気にうなずく。
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