たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
────侍女としての長い一日がやっと終わったフィーアは自室で緊張から解放されていた。


何もかもが初めてで、失敗も多かったが奴隷の生活に比べたら遥かに幸せすぎた。


屋敷のみんなも優しくしてくれる。コンラートをのぞけば。

役職上仕方ないことをフィーアは理解している。

コンラートが私を認めてしまったら、執事長として示しがつかなるなる。

あくまでも一線を引きたいのだろう。



本来、私はこの屋敷にいられる身分ではないのだから。

むしろ私がいることで、みんなに負担を強いてはいないだろうか?

申し訳なさが心を支配する。


ここを出て自立も考えたが、若い娘の仕事なんて限られている。

大抵の商家は家族経営がほとんどで他人を雇う余裕なんてない。

田舎から町に憧れて出てきた娘の成れの果て....娼婦か、騙されて奴隷商人に売られるのが関の山だ。

それくらいの知識はフィーアにもあった。

ベッドに座って閉じられた窓から夜空を見つめる。

視線の先には果てしない闇が続いている。

わたしの未来はいまだ闇の中。これからどうなるかなんて想像も出来ない。
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