たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「みなさんご迷惑でしょうけど、もう少しここに置いて下さい」

独りつぶやく。

将来の不安はあるものの、今は考えたくなかった。

やっと奴隷の生活から解放されたのだから。



フィーアは立ち上がると窓を開ける。気持ちのいい風が髪を優しく揺らす。

初夏を感じさせる少し湿度のある空気。


「もうすぐ夏ね」


ふるさとでは夏祭りの準備をしているだろうか?



フィーアのふるさとはユリが名産だった。

白いユリの他にも、黄色やピンクがあった。


フィーアは白いユリが一番好きだ。

大輪の花は清楚で気高く美しく凛としていて、強い意志が感じられる。

自分もそうありたいと子供心に思っていた。

はたして今の自分はそうだろうか?


だが小さく首を振る。

今の私に気高さなど....ない。
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