たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「ご主人様....」ためらいがちに呼びかけるものの、エルンストの返事は愚か、姿さえなかった。


部屋のカーテンも閉められたままで、天蓋付きのベッドにかかるシフォン生地の薄いカーテンも閉じたままだ。


トレーの水をベッドのサイドテーブルに置くと、まず朝日を遮る窓際のカーテンを開けた。

朝の陽ざしがまぶしいくらに部屋に差し込む。

部屋の空気を入れ替えるために、窓も開け放つ。


「ああ、気持ちがいい」思わず漏らす。


次はいよいよエルンストを起こさなくてはならない。

緊張のせいで少し震える声でシフォンカーテンの前から呼びかける。


「ご、ご主人様、朝です。起きて下さい」

まったく反応がない。


カーテンのせいで姿はハッキリ見えないが、まだ起きていないようだ。


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