たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「今日からお前だったな。安心して寝過ごした」


ね、寝過ごしたって....そんな。


フィーアはカチンコチンに固まった体をぎこちなく動かして、クローゼットを開けると白のシャツを取り出し、エルンストに渡そうと振り返った。


「キャーーーーっ!!!」

手に持っていたシャツがパサリと床に落ちる。


「ご、ご主人様どうか下着を....」

その場にしゃがみ込みシャツを拾いながら視線に困るフィーアの姿が。


「ああ?そうだ」


冷静沈着、クールなエルンストからは想像もつかない光景だった。

寝ぼけているのだろうか?

フィーアはその場から逃げ出したい気分だ。



「風呂も一緒に入っているのだ。別に驚く必要もあるまい」


ヘレナやコンラートが聞いたら誤解しかねないセリフをエルンストが吐く。


「一緒に入ってなどおりません。お背中を流しているだけです」


「どう違うのだ?」


「違いますっ!」本当に目の前にいる人はご主人様なのだろうか?

まるで別人。フィーアは困惑しきりだった。





< 58 / 296 >

この作品をシェア

pagetop