たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「お前が起こしに来ることだ」

そう言いながら、フィーアの髪に手を伸ばす。

えっ?フィーアはドキンとしながら顔が赤くなるのを感じた。

エルンストは自覚があるのか無いのか、それなりの美丈夫だ。
そんな事を言われて、赤くならない女性がいたら見てみたいものだ。

フィーアの反応も当然だろう。

エルンストの黒曜石のような瞳に吸い込まれるような感覚に陥り、軽いめまいを感じる。

ゴクリと息を飲み込むフィーアを見つめていた彼はいきなり、「ふっ」と笑うと
「年寄りより女のほうがいいに決まっている」そう囁く。

何故かフィーアは少しがっかりした。気を取り直して、


「そう言えば、コンラートさんが起こしに来ていた時は、すでにお支度を済ませておいでだと聞いておりました」


エルンストは口角を軽く上げた。


「想像してみろ。こんなことコンラートにさせられると思うか?
あいつだって嫌だろうし、俺とて朝っぱらから気持ちが悪くなる」


確かにその通りだ。
想像してフィーアは笑ってしまった。


エルンストはそんなフィーアを見つめている。


「お前、笑うんだな」

そう言われて、自分が笑いを忘れていたことに気づくフィーアだった。


私はどれくらい笑っていなかったんだろう?


「笑った顔は中々だぞ」

フィーアの反応を見ることなく、エルンストはさっさと部屋を出て行ってしまった。
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