たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
*****

「ごめんなさい、ハンス」


エルンストがハンスに夕食の材料がダメになった理由を説明してくれたが、
酔っ払いの喧嘩などに構っていなければ、食材もバラの花もダメにならなかったことにフィーアは責任を感じていた。


「いいてことよ。こんな時こそ料理人の腕が試されるってもんだ」

ハンスは豪快に笑うと、フィーアの肩を叩いた。


「あのねハンス。ご主人様が入浴のあと食事の時間までお酒を召し上がりたいって。
何かつまめるものあるかしら?」

グラスを用意しながら、適当な食べ物を探す。


「それだったら、そこの干し肉をスライスすればいい」ハンスは指さす。


「わかった、ありがとう」


スカートのすそをひるがえすとフィーアは早速準備にとりかかる。


「フィーア、ご主人様がお風呂だって」調理場にルイーズが姿を現した。


「はーい、ありがとルイーズ」

フィーアは慌ただしく調理場を後にした。
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