ダサ倉君に焦がれたい






章司君は冗談を言っているのかと思った。

だって、章司君みたいにかっこよくてモテそうな人があたしなんて好きになるはずなんてないから。

だけど章司君はなおも真剣な目のまま、あたしに一枚の紙切れを差し出す。





「これ……野外フェスのチケットなんだけど。

つばさと行きたいな。

どうしてもって言うなら、朝倉君を誘っても……」



「僕は行きません」




いつの間にかすばるくんがいて。

そして、その言葉に飛び上がった。





すばるくんはやっぱりダサ倉だったけど、なんだか表情が固い。

……そうだよね。

章司君がびっくりすることを言ったから。

でも、きっと章司君は本気じゃないし、あたしにはすばるくんしかいないんだよ。





そんなことを考えるのんきなあたしとは違い、章司君とすばるくんの間に花火が飛び散るようだった。



< 110 / 322 >

この作品をシェア

pagetop