ダサ倉君に焦がれたい
初めて参加した野外フェスは意外に楽しかった。
音楽業界には疎いほうだが、色んな音楽を聴いて、騒いで、たくさん笑った。
ライブを見ながらすばるくんを気にする。
すばるくんは、これらのアーティストをどんな気持ちで見ているんだろう。
出番を控えた今、どんな気持ちでいるんだろう。
ライブを楽しんでいるのに、すばるくんのことで頭がいっぱいだ。
そうこうしているうちに、客は増えてきて。
あたしたちは押されてステージの近くまで行ってしまって。
炎天下の中もみくちゃになって苦しくなる。
章司君は隣にいたが、すばるくんとは離れてしまって。
「あれ?すばるくん、どこ行ったんだろ?」
章司君に聞くが、章司君まで声が届かないようで。
章司君は困った顔であたしを見つめるだけだった。