ダサ倉君に焦がれたい






ライブハウスの階段を降りて帰ろうとした時

……ぎゅっと手を引っ張られた。

思わずよろめいたあたしは、暗い通路に無様に倒れこんだ。

こんなあたしに人々は気付かず、



「sandかっこいい!」



なんて言いながら続々と去っていく。





あたしもせっかくいい気分だったのに、最後の最後で……!!





手を引っ張った本人を睨んだ時……

あたしは言葉を失った。







「三谷さん」




彼は優しい笑顔であたしに言う。

ステージの上で見たその顔より、ずっとずっと優しい笑顔で。




「本当に来てくれたんだ。

ありがとう」



「……え?」




あたしは、穴が空くほどその綺麗な顔を見ていた。


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