ダサ倉君に焦がれたい
「そういうのが駄目なんだって」
すばるくんは心地よい声で囁いて……
至近距離に顔が近付く。
ドクドク言ってる心臓の音がうるさい。
あたし、倒れてしまいそう。
甘くていい香りがして……
さらに顔が近付いて……
まさか……
まさかこれ……
キスされる!?
鼓動が最高潮に達したが……
「今日はここで終わりですね」
すばるくんの声で我に返った。
なんだ色気のあったすばるくんは、すっかりダサ倉に戻っていて。
やっぱり周りの人々が笑っている。
キモいなんて言って。
真っ赤な顔のまま、ぽかーんとすばるくんを見上げるあたしに、
「僕、これから打ち合わせがあるので。
あそこのビルに行かないといけないので」
彼はビルを指差しながら言う。
なっ……なーんだ、デートが終わりってことか。
てっきり、キスを寸止めされたのかと思ってしまった。
まさかね……
まさか、すばるくんに限ってキスなんて!
自分に言い聞かせるのに、胸のドキドキは鳴り止まないのだった。