ダサ倉君に焦がれたい
「立体異性体は、エナンチオマーとジアステロオマーに分けることが出来……」
あたしは、訳の分からない講義を何となく聞いていた。
そして眠い目を擦り、黒板の汚い文字をノートに書き写す。
大学に入って恋も勉強も頑張ろうと思ったのに、どちらも不完全燃焼だ。
「構造式はこうだから……」
教授は、意味不明な化学式を黒板に書く。
そして……
あたしのほうを見た。
ヤバい……当てられる!
そう思ったが……
「そこの眼鏡の男。
……その、ホームレスみたいな身なりの男」
悪気もなく教授は言う。
そして、教室の中に失笑が起こった。