ダサ倉君に焦がれたい









「立体異性体は、エナンチオマーとジアステロオマーに分けることが出来……」




あたしは、訳の分からない講義を何となく聞いていた。

そして眠い目を擦り、黒板の汚い文字をノートに書き写す。

大学に入って恋も勉強も頑張ろうと思ったのに、どちらも不完全燃焼だ。




「構造式はこうだから……」




教授は、意味不明な化学式を黒板に書く。

そして……

あたしのほうを見た。




ヤバい……当てられる!




そう思ったが……





「そこの眼鏡の男。

……その、ホームレスみたいな身なりの男」




悪気もなく教授は言う。

そして、教室の中に失笑が起こった。


< 2 / 322 >

この作品をシェア

pagetop