ダサ倉君に焦がれたい








電車を乗り継いで、あたしたちは綺麗な砂浜に来ていた。

まだ春の海辺は、人なんてほとんどいなくて。

使われていない海の家の近くに、去年の夏のアイスのゴミが転がっていた。

海の色はまだ冷たそうだが、陽の光を浴びてきらきら輝いている。

夏の賑やかな海も好きだが、こんな寂しげな海もいい。





ベンチに座って見惚れていると……

すばるくんが鼻歌を歌う。

無意識に歌っているのだろうか。

何の歌か気になって必死に聴き取ろうとするが、やっぱり分からなくて。

ただ、寂しげで切ないメロディーがやたら心に染みた。


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