ダサ倉君に焦がれたい
「お仕事頑張ってね」
笑顔で手を振ったあたしに、すばるくんは言う。
「つばさちゃんも来てください」
……え?
「僕……大切な予定、忘れていました」
「な……なに?」
「今夜、先輩のバンドのライブに、ゲスト出演するんでした」
「は……はぁ!?」
すばるくんは馬鹿なの?
天然なの?
なんでそんなに大切なこと忘れていたの!?
「やばい……遅れる!!」
大騒ぎするすばるくんに腕を引っ掴まれて。
訳も分からないまま猛ダッシュして。
ドキドキどころではなかった。
記念すべき初デートの結末がこれか。
だけど、なんだかすばるくんらしいよ。
走りながら笑ってしまった。
そして、思いがけないライブの始まりに、心を揺らしていた。