ダサ倉君に焦がれたい







朝倉君のことばかり考えていた。

あたしの頭は、もはや朝倉君に侵食されている。

それを打ち消すかのようにテレビをつけたが……



「今日のゲストは、sandの皆さんです」



テレビから声が漏れ、あたしは固まる。

そして、明るくなった液晶画面には、昨日見た素敵四人組がにこやかに手を振っていた。





あたしの目は、案の定彼に釘付けになる。

ストライプのシャツに、シンプルなネックレス。

柔らかい長めの黒髪に、整ったその顔。

彼はその顔に笑みを浮かべたまま、よろしくお願いしますと頭を下げた。





「sandさんのデビュー曲『Fly』は若者に大人気で、なんとsand旋風を巻き起こしています」




司会者の言葉に、ありがとうございますと頭を下げる朝倉君……いや、SU。

どうやらsandはあたしが思っている以上に人気らしい。

そして、こうやってテレビで見ると、遠い人に思えてしまう。



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