ダサ倉君に焦がれたい
「やばっ!林、毒舌ハンパなくない?」
「ダサ倉にホームレスって言ったよ?」
後ろの女子たちの内緒話も聞こえてくる。
そして……
席を一つ開けたあたしの隣に座っている彼は、何も言わずに俯いた。
「よく見れば君、教科書すら持っていないじゃないか」
再び笑いが起こる。
そして、彼は下を向いてしまう。
あたしは、何だか彼を笑うことが出来なくて……
「教科書、見る?」
おもむろに教科書を差し出した。
彼は一瞬驚いてあたしを見た。
分厚い眼鏡の奥の瞳が、大きく開かれた。