*゚闇に沈む少女*゚
☆斎藤side☆
まだ、薄暗い朝......
俺は 厠へ行った帰りに
中庭の方で 微かな刀の素振りしてる音がしたから、縁側に向かうと ‘雛菊 紫陽花’の姿があった。
素振りをしている 雛菊の姿は綺麗だった...
雛菊が 新撰組に入った際
名前がわからないと 何かと支障が出るから
と言うことで、教えてくれた。
でも、俺が雛菊の事を知ってるのは
名前だけだ......俺は、雛菊の顔すら知らないのが 何故か無性に悔しかった。
俺の気配に気付いたのか、こっちを向いて
「おはようございます!」
相変わらず、顔を隠しているので
未だに、彼女の顔を知らない。
その時 俺は 何時の間にか、
雛菊の事をずっと考えてる事に気付いた。
「...おはよう、早いんだな。」
俺は 、少し曖昧な挨拶になってしまった。
俺が 敬語や呼び方を気にしないでいいと言うと
「いえ...気にしますよ。
僕は 皆さんより入り立てですし
斎藤さんは 僕より上じゃないですか!」
と....遠回しに断られた。
俺は そんな事より...
さっきの鋭い気配の察知と言い...
あいつは 何時も神経を尖らせている。
雛菊が...何時 気を休めているのかと思うと
俺は、少し心配になった。
雛菊は 朝餉の手伝いをすると言い...
中庭を去った。
そんな背中を俺が 切ない表情で見つめてたなんて 気付いてなかった。