*゚闇に沈む少女*゚



あれから数分後、用事から帰ってきた
芹沢さんに呼ばれた




「芹沢さん、雛菊です」




「入れ。」





失礼します、と言い
襖を開けるとお茶を飲む芹沢さんがいた。






「何の御用でしょう?」




「お前に、これやる。」





芹沢さんが立ち上がり押入れを開けて
何かを探ていて、取り出されたのは…綺麗な着物と簪だった。




僕には、勿体ない程の綺麗な着物と簪に圧倒され
開いた口が塞がらない状態だった





「明日、隊士たちも連れて島原で宴会をやるのだが お前もそれを着て参加しろ。」





「え…」





「髪も瞳も偽らずだ」





「……っ、しかし⁉」





僕は、余りに突然すぎて 取り乱してしまった






「お前は、土方や沖田たちがお前の姿を見て嫌な顔したか?」





「……。。。」






彼らは、そんなことしないし、言わない…だけど






「お前のその姿よりも、本当のお前と向き合いたいと
あいつらは思っているはずだ。」







わかっている、彼らは…本当の僕を望んでいるのは
土方さんや沖田さんだけじゃなく


何も言わなかった、近藤さん、藤堂さんや永倉さんだって
表情はそう言ってた。









でも、臆病な僕は 築かない振りをして目を逸らしていた




彼らの優しさが、温かくて…苦しくて切なくて
やりきれない気持ちになる





あれは、眩しすぎる…真っ黒に浸りきっている
僕には 近寄れない、ううん 近寄ってはいけない。。。






「確かに、お前は強いが脆いのだ





…それでは、本当の強さとは言えんのだ。」






大きい言葉の矢が 心に刺さった。





 


その時、ふわっとした香りと温もりに包まれた
僕は 芹沢さんに抱きしめられているのだ






だけど、それに 絶えられない僕は
芹沢さんの腕を押し退けて部屋を出ていった。






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