こゝろ
隠し事がバレる時
「ねえ、優心。何かあったの?」
撫子がお弁当を私に食べさせながらそう訊きました。
「何かって何?」
「それを訊いてるの。何かあったんでしょ?」
あったにはありました。ここへ来るまでの間、滝さんといろいろ。
でも、撫子は「いつ?」とは訊いていません。訊いていないから、私は「いつ」のことを言えばいいのかわかりません。
「いつの話?」
「さっき。」
「さっきって、ここに来るまでの間ってこと?」
「そう。その間に何かあったの?」
「トイレに行ってただけだよ。」
私は撫子の揚げた大葉の天ぷらを食べながら答えました。でも、撫子が納得していないのは、撫子の表情を見ていればすぐにわかります。