こゝろ





「ねえ、優心。そろそろ本当のこと、教えてくれない?」



撫子が私にクッキーを食べさせながら訊きました。



「本当のことって?」



「昼休み、トイレに行ってたんじゃないんでしょ?」



まだその話をするかと私は内心、苛立ちましたが、その感情をひた隠しにして、答えました。



「どうしてそう思うの?」



「だって、優心、目腫れてたもん。」



嘘というのは、こういうところからバレるものだということを、私は改めて実感しました。そして、そのことを実感している真っ只中、撫子は持っていたチェーンを思いっきり引っ張りました。



「ねえ、どうしても言わない? 言わないと、どうするかわかってる?」



首輪が締まって、息ができませんでした。口の端からよだれが垂れてきました。意識がボーッとしてきます。思わず首輪に手をかけました。それを見ていた撫子は、やっと私を引っ張ることをやめてくれました。




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