こゝろ
「まさか、このこと話した? 優心はそんなことしないよね? ね? そうだよね?」
私は何も言わずに撫子の恐ろしい形相を凝視していました。撫子の表情が更に更に強張ります。
「……あーあ、話しちゃったんだ?」
私は軽く頷きました。もう死んでしまおう。そう覚悟を決めた最後の頷きのつもりで、必死に勇気を奮ったのです。
しかし、撫子は私に何もせず、しかし手錠は繋いだまま、ベッドの脇に腰かけました。
「滝に何を喋ったの?」
「私が……撫子に……されてること……。」
「それで、滝は何だって?」
「私が守るからって……。」
撫子は横になっている私の顎に手をやりました。
「ねえ、優心。滝は優心を守るって言ったけど、滝は誰に守られるんだろうね。」