こゝろ





私は解放されて、家に帰り、自分のベッドに手錠なしで横になりながら、撫子の言った言葉の意味について考えました。



私は滝さんに守られる。でも、滝さんは、誰に守られるのか。



撫子は捨て台詞のようにそう訊いたのです。



私の頭の中で真っ先に浮かんだ答えは、佐久間さんでした。



佐久間里香さん。きっと滝さんは佐久間さんに守られることなんて本当は望んでいないと思います。でも、いざとなれば、頼るのは佐久間さんだと思います。



滝さんはそうして今まで、日陰に隠れて栄養を蓄えてきたのですから。



でも、太陽という名の佐久間さんが今はいません。学校にもしばらく来ていません。そんな佐久間さんという名の佐久間さんがいなくなった滝さんには、日陰がありません。



じゃあ、誰が守るのか……。誰が太陽になるのか……。



その答えは割と早く浮かんできました。




< 109 / 150 >

この作品をシェア

pagetop