こゝろ
「とりあえず、撫子に会いに行く。今どこ?」
「あ、見に来る? 滝を埋めるところと、佐久間の死体の腐敗具合の確認に。」
「……人が死んでるんだよ?」
私はそんな冗談を言ってほしくありませんでした。確かに、佐久間さんのことは好きではありませんでした。でも、だからと言って、殺すなんて絶対に間違っています。
滝さんのこともそうです。初めは好きではありませんでした。でも、最終的には好きになって、せっかく好きになれたのに殺されてしまったのです。
悲しい。悲しいに決まってます。
「だから何? 殺したんだから死んでるでしょ。死んだ奴に失礼とか思っちゃってるわけ? いいじゃん、別に。死んだら何も持って行けないし、こんな陰口、聞こえないって。」
それでもです。死者に対して、そんな風に言える撫子が、私は許せませんでした。