こゝろ
その場に自転車を止めて、裁ちバサミを制服のブレザーの内ポケットに入れて、周りをキョロキョロしながら歩きました。
どこで撫子が見ているか。どこで撫子が私を殺しに来るかわかりません。用心しなければなりません。
少し歩くと、山の斜面に人の通った痕跡のある道が現れました。
近くに咲いていたヒメジョオンが赤く染まっていて、ああ、この先に撫子がいる。佐久間さんも滝さんもいるんだなということがわかりました。
先へ先へ進みます。足元は暗く、スマホのライトを頼りに歩いて行きます。所々、地面に血痕が残っています。そして、先に進むに連れて、物凄い臭気を放っています。
死臭でしょうか、ヘクソカズラの臭いでしょうか。どちらも嗅いだことがないので、わかりませんでした。
でも、その臭いが死臭……死体が腐っている臭いだということがわかったのは、5分ほど歩いた先にいた制服姿の撫子を見た時でした。