こゝろ
「意外と早かったね、優心。さすが、時間にシビアだね。」
撫子の傍には、血まみれになった滝さんが倒れていました。
「ああ、これ? 滝。」
撫子は足で滝さんの背中を踏みつけました。私はそれを黙って見ていました。
「虎の威を借りる狐も死んだら所詮、こんなもんだよね。こいつ知ってる? 私に殺される前になんて言ったか。」
「……なんて言ったの?」
「『殺さないで!』とか『私が何したって言うの!』だって。それもワンワン泣きながら、私のスカートに抱き着いてきたんだよ。いやあ、優心にも見せたかったな……。動画撮っとくんだったかな。」
それから撫子は私に背を向けて、大きなスコップで穴を掘り始めました。
「早いとこ終わらせないと……。」
撫子は焦っているようでした。