こゝろ
「ねえ、優心。知ってる? 新選組の土方歳三のこと。」
撫子はスコップを地面に突き刺しました。佐久間さんが埋められている辺りのところです。
「土方……歳三? 確か新選組の副長だった人でしょ?」
「そう、それ。その土方歳三が戦術で用いた技までは知ってる?」
土方歳三が戦術で用いた技? 知るわけがありません。名前くらいは知っていますが、別に日本史が好きなわけでも、得意なわけでもありません。教科書に書かれているくらいの知識で、歴女でもありません。
「知らないし、今、この状況でそれが役に立つと思うの?」
「立つと思うよ。」
撫子は自信満々にそう答えました。すっかり度胸が据わたようで、物怖じ一つしません。