こゝろ
「ねえ、優心。土方歳三の戦術が本当に役に立つか、試してみてもいい?」
そう口では言いますが、撫子はスコップを地面に刺したまま、身動き一つ取りません。
そのうちに、雲が月の前を通過しました。辺りが明るくなり、私は決心しました。
この次、月に雲がかかったら、行こう……と。
「別にいいよ。やってみたら?」
私は撫子に自分のタイミングを悟られないように、敢えて隙を見せつけるように言いました。
「ホント? じゃあ、あの世で『優心はなんで死んだの?』って訊かれたら、『女版土方歳三に殺された。』って答えてね? 私、幕末が好きで、新選組が好きで、土方歳三が好きだから。」
昔の偉人の逸話を本気にしている撫子は、中二病じゃないかと思いました。どこか世間とかけ離れた世界に、自分だけいるような、そういうことを考えている病人。その発想力を何かで表現したら、きっとその道ではすごい人になると思います。
まあでも、私に今から殺されるわけですから、その夢は叶いませんけど……あ、時間切れです_____