こゝろ





「ねえ、知ってる? 口裂け女って。」



「あー、オカルトだろ? 口が耳まで裂けてて、マスクしてて、コート羽織ってて、『私、綺麗?』って言って、裁ちバサミで人を殺すって女。」



「そう。その口裂け女。なんか怖いよね。」



「そうか? あんなのただの迷信だろ?」



「え? キミたち知らないの? 隣町の高校で、女子が殺されたって話。」



「知らない。それいつのニュース?」



「今朝だよ。目撃者がいたらしくて、耳まで口が裂けた髪の長い女が女子高生を裁ちバサミで刺し殺したのを見たんだって。」



「それってさー、口裂け女が出たんじゃない?」



「愉快犯だろ? 口裂け女の真似事してる奴だよ。」



「それがそうでもないらしいんだ。」



「そうでもないって?」



「口裂け女じゃないってこと。」



「いや、口は裂けてるんだけど、『私、綺麗?』なんてことは訊かなかったんだって。」



「目撃者の聞き間違いじゃないか?」



「いや、そうじゃない。なんでも、目撃者の話だと、相手にこう言ったんだって。」



「へえー、何?」



「こ、ころ_____




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