こゝろ





「その代わりに一つ、条件出してもいい?」



「条件……ですか?」



「そう。英訳すると『Conditions to become a friend』ってところかな?」



Conditions to become a friend。つまり、『友達になるための条件』。



「まず、私の前では敬語をやめること。」



「敬語をですか?」



「ほら、また。なんか敬語で話されると距離空けられてるみたいに感じるもん。」



確かにそうかもしれません。私は常に敬語を使っています。それは、誰に対しても失礼に当たらないようにという心遣いからくるものでした。



でも、それは友達の間ではかえって失礼に当たることを、そんな態度の私を表す四字熟語があることを、この時日野さんに教えてもらいました。



「まさに優心は、慇懃無礼って感じ。」



「インギンブレイ……ですか?」



「丁寧過ぎて、かえって失礼に当たること。友達の間で慇懃無礼な態度はありえないから。」



「き、気を付けます……。」



「ほら、そうやってすぐ敬語になる。」



日野さんは笑って私の頭を手のひらでポンッと叩きました。




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