こゝろ
私はこの日、バスケ部の練習を最後まで見ていました。ずっと立ちっぱなしで、何度か体育館に出入りしてくる人の邪魔にもなりました。
そして、練習が終わった後の島原くんが駐輪場で自転車に鍵を差しているところで、私は勇気を出して声をかけました。
「あの、島原くん。」
「なんだ、優心か。部活?」
「いえ、私は帰宅部なので……。」
「じゃあ、補習か委員会か何か?」
私がバスケの練習を見ていたことを、島原くんは気づいていなかったみたいで、少し残念ですが、恋はめげない、負けないが大事だと思うので、気にしないことにしました。
「いえ、まあちょっと……。」
「そう。」島原くんは自転車のスタンドを倒しました。
「せっかくだし、一緒に帰る? 方向一緒だったよね?」
突拍子もない提案に私は嬉しくなって、俯いて、顔を髪の毛で隠しながら、
「は、はい……。」
と小さく頷きました。