こゝろ





交差点の信号待ちになって、私たちは二人並んで止まりました。後ろからのシルエットを想像すると、なんだかカップルに見えて、でも前から見ると、不釣り合いなカップルに見える気がして、島原くんに申し訳なくなってきました。



私がもっと可愛かったら……。誰を恨んでいいのかわかりません。でも、こうやっている時間があるのは、この世に生を受けたからですので、これはこれでよかったのかもしれません。



そんな幸せを無駄にしないために、私は再び勇気を振り絞って、島原くんに話しかけました。



「島原くんはMなんですか?」



「いや、そうじゃないよ。」



「じゃあ、Sなんですか?」



「うーん……。」島原くんは唸りました。



「Sになりたくて、もがいてるって感じかな。」



「Sになりたいんですか?」



「だってSっ気のある男ってカッコイイじゃん?」



「そうですかねー。」今度は私が唸りました。



「私は今の島原くんの方が好きですけどね。」



そこで信号が青に変わりました。渡っていいという意味を示す青信号に変わったのと同時に「好き。」という言葉を言えたことに、何か運命的なものを感じました。




< 32 / 150 >

この作品をシェア

pagetop