こゝろ
交差点の信号待ちになって、私たちは二人並んで止まりました。後ろからのシルエットを想像すると、なんだかカップルに見えて、でも前から見ると、不釣り合いなカップルに見える気がして、島原くんに申し訳なくなってきました。
私がもっと可愛かったら……。誰を恨んでいいのかわかりません。でも、こうやっている時間があるのは、この世に生を受けたからですので、これはこれでよかったのかもしれません。
そんな幸せを無駄にしないために、私は再び勇気を振り絞って、島原くんに話しかけました。
「島原くんはMなんですか?」
「いや、そうじゃないよ。」
「じゃあ、Sなんですか?」
「うーん……。」島原くんは唸りました。
「Sになりたくて、もがいてるって感じかな。」
「Sになりたいんですか?」
「だってSっ気のある男ってカッコイイじゃん?」
「そうですかねー。」今度は私が唸りました。
「私は今の島原くんの方が好きですけどね。」
そこで信号が青に変わりました。渡っていいという意味を示す青信号に変わったのと同時に「好き。」という言葉を言えたことに、何か運命的なものを感じました。