こゝろ





横断歩道を渡り切ると、私は左。島原くんは右へ行かなきゃいけません。つまり、この横断歩道を渡る1歩、1歩が島原くんと二人っきりの世界が終わりへと近づいていることを意味します。



「ねえ、優心。」



「な、なんでしょうか?」



私の心を読まれたのか、私は裏返った声で返してしまいました。その声を直すために咳を二度しました。



「明日の放課後、暇?」



これはきっと私を誘っているということなのでしょう。私は迷わず「はい。」と答えたかったんですが、勇気が追い付かず、なかなか返事ができませんでした。



「暇じゃないなら、いいんだけどさ。」



「い、いえ、暇です……。」



「本当に? ならさー、一日だけ助けてくれない?」



「一日だけ助けてくれない?」私はこの時、島原くんのこの言葉が何を意味するのかわかりませんでした。




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