こゝろ
体育館には私たちの他には誰もいませんでした。
私と島原くん、二人っきりにしては大きすぎる世界の出来上がりです。
私は言われた通り、島原くんに向かって適当にボールを投げました。それを受け取った島原くんがドリブルをして、シュート。
ボールはボードに弾かれました。
「シオー!」
思った以上に大きく響いた私の掛け声に、島原くんは頭を掻きながら苦笑いを浮かべました。
「30本決めるまで付き合ってくれよ?」
「1本目で外したのに、30本も入るんですか?」
私は意地悪くそんなことを言いました。島原くんはムキになって、私にボールを求めました。
投げたボールをキャッチして、ドリブル。シュート。今度はゴールに入りました。
「ナイシュー!」
「よし、あと29本な。もういっちょ!」
私はこの時間がいつまでも続けばいいなと思いました。島原くんがシュートを外し続ければ、この時間がいつまでも……最低でも学校が閉まる時間までは続きます。でも、島原くんはこんなにも頑張っています。この頑張りが報われるといいなという気持ちもありました。
複雑な心境の中、私はボールを投げ続けました。