こゝろ





「お、お腹空いてない?」



悩みぬいて導き出した私の即興の答えは、これでした。撫子はこれに苦笑いで首を傾げました。



「かき氷食べたのに?」



「あ、いや、えっと、その、所謂……すみません……。」



「はい。」



撫子が私の前にスマホを持っていない左手を出しました。握手でないことは確かです。手のひらが上を向いています。



「な、何?」



「今、敬語使ったから罰金100円。」



撫子の言葉で、この左手は催促の手だったことを知りました。



「そこまで無理しないでいいって言わなかったっけ?」



「あれ? 私、そんなこと言った?」



とぼける撫子の表情を見て、私は今日の目的を危うく忘れるところでした。



「撫子、これからやること決まったよ!」



「へえー、何?」




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