こゝろ





今日の放課後の目的は、昨日の560円を返すことでした。



しかし、返すのは、現金ではありません。



「そういえば私、そんなこと言ってたわね。」



プリクラの機械を慣れた手つきでタッチしながら、撫子は言いました。



「撫子って自分の言ったこと、すぐ忘れるよね。」



「まあね。ただ、約束してたのは憶えてた。」



私は撫子が勉強しないのにできる理由が何となくわかったような気がします。撫子は、要所要所だけを憶えていて、細かいところは憶えないのです。日本史の勉強方法は、広く浅くだって言いますが、まさに撫子の勉強方法はそれなのです。



「撫子って日本史得意?」



「多分得意。テストの点数は一番いいかも。」



「何となく」が「確信」に変わりました。




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