こゝろ
それからまたフードコートに戻って、私は撫子にジュースを奢りました。150円のオレンジジュースです。
「プリクラが400円で、このジュースが150円で……。」
私は右手で昭和56年の10円玉を見つめました。この10円を撫子のために使うには、どうすればいいのか、いろいろ考えますが、なかなか思いつきません。
フードコートには10円で買えるものは何一つなかったのです。
「どうしたの? ギザ10だった?」
「いや、そういうわけじゃないけど……400円にそのジュースが150円。合わせて550円で……。」
「なーるほど……。」
撫子はストローを噛みながら、大きく二度頷きました。
「さっきのゲーセンに10円で買えるガムのガチャガチャあったよ?」
「撫子、ガムいる?」
「いらない。私、ガム嫌いだし。」
いよいよこの10円の使い道に困ります。