こゝろ
今思えば、撫子も私と同じ人間だったようです。
心の底から友達と呼べる人がいない。そういう人を作らない。作れない。作り方がわからない。簡単なことだって人は言うかもしれません。でも、そういう人間もいるということをわかってほしいのです。
私がそうなので、きっと撫子も同じような気持ちなはず。そう思って、私は撫子の頭を撫でてあげました。
「な、何するの?」
撫子は狼狽えました。私は構わず撫子の頭を撫で続けました。
「お返し。」
「お返しって……。」
撫子は頬を膨らませます。その顔が可愛くて、私はさっきよりも少し荒く撫子の頭を撫でました。
「撫子も可愛いとこあるね!」
「もうっ! ホントやめてって!」
撫子は顔を真っ赤にして、そう言い放ちましたが、私の撫でる手を止めることはしませんでした。
受け入れているのでしょう。誰かに何かしてもらいたい時は、自分からする。きっと撫子は誰かに頭を撫でてもらいたいから、私の頭を撫でたんだとこの時はそんな見当違いなことを思っていました。