こゝろ
この日、佐久間さんが珍しく学校を休みました。佐久間さんは素行は悪いですが、学校を休むようなことはほとんどありませんでした。
昼休みは大抵、佐久間さん、滝さん、撫子と4人で中庭でお弁当を食べることになっています。ただ、この日は佐久間さんがいなかったので、3人で食べることになりました。
「優心、今日サンドイッチなんだ。」
「まあね。今日は自分で作ったんだよ! 撫子も食べる?」
私たちの会話を聞いていた滝さんは、首を傾げました。その滝さんの仕草の意味に私は気づいて、「しまった!」と思いました。
「ねえ、優心。なんで撫子にタメ語なの?」
私は撫子の方を見ました。撫子は人差し指で右の眉毛を切る仕草をしました。
「あ、あんまり張り切って作ったもので、つい……。ごめんなさい、日野さん。」
「いいよ、別に。それより、サンドイッチ1つもらっていい?」
撫子は普段通り興味無さそうな表情で、ツナマヨネーズのサンドイッチを1つ取りました。
「ふーん、そういうことか……。」
滝さんは二度、うんうんと頷いて、それからチョコチップメロンパンを一口齧りました。