こゝろ





「撫子と優心ってさー、里香のことどう思う?」



滝さんの言葉に私と撫子は顔を見合わせました。



「どうって何?」



撫子はサンドイッチを持っていない左手でスマホを取り出し、いじりながらそう訊きました。



「まあ、なんて言うか……ウザくない?」



私は驚きました。きっと撫子も同じように驚いているようで、スマホをいじる手を止めて、「え?」と滝さんの顔を見ています。



滝さんが佐久間さんのことを「ウザくない?」なんて訊くってことは、滝さんは佐久間さんのことを「ウザい。」と思っていることになります。それは、いくら鈍感な人でもわかると思います。



ただ、滝さんがまさか佐久間さんのことを「ウザい。」と思っているなんて考えてもみませんでした。滝さんは佐久間さんの親友だと思っていました。その証拠に、滝さんは、私や撫子がいない時でも佐久間さんと一緒でした。トイレに行く時も、移動教室の時も、校内マラソン大会のゴールの時も、いつも一緒でした。



「私、思うんだよね……。里香ってさー、私たちのこと利用してるだけで、自分一人じゃ何もできない人間だと思うの。」



確かに滝さんの言う通りかもしれません。でも、それは滝さんも同じで、佐久間さんがいないと何もできない人だと私は思います。ただ、そんなことは口が裂けても言えません。




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